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葛飾区T様:悲壮感に苛まれた依頼者に頑張る意欲を与えたい

T様は、雑貨の卸業を営む自営業者です。しかし、本物件を購入したはいいが仕事が忙しく家に帰れない状況にありました。運良く賃借していただける方が現れ直ぐに賃貸にまわしました。当初管理をした業者も今は倒産してしまい自らが賃貸管理をしている状況です。

そのときに知り合った管理会社からお金を貸してくれと相談を持ちかけられ、「会社立ち上げ資金として200万円をリフォームの名代でどこかで借りてくれないか?3ヵ月後には色をつけて全額返済できるから。」とお願いされました。管理をお願いしている安心感からお金を借りて渡しました。しかし、30万円は返ってきましたが、そのまま行方知れずになってしまい借入の残額だけが残りました。いわゆる詐欺にあってしまったのです。

もともと、卸業を営みながらパック販売のコンサルタントを行っており、ある雑貨メーカーがT様のコンサルタントにより飛躍的に販売実績を向上させました。その報酬として2000万円以上の入金が見込めるはずでしたが、契約書に不備があるとして支払ってもらえず、その件で裁判をしている矢先の詐欺で、一気に債務超過となり支払いが一切できなくなりました。諸々の返済にあてる為に借金が借金を呼び、住宅ローンの支払いがどうしても後回しになり状況は悪化の一途をたどりました。

お会いしたときにはすでに疲れきっており、本人もあと1ヶ月精神状態が持つかどうかと、カーテンを閉め切った暗い部屋で早く楽になりたいと切実に相談して来ました。

現在の賃借人はお借りいただいてから10年間一度の家賃の滞納もなく非常に良いお客様であり、絶対にご迷惑はかけたくなので競売は避けたい、何とかならないかと相談されました。

自己破産を視野に債権者と交渉に当たり、オーナーチェンジとしてのお客様を探すと言う方向性は見えましたが、そのためには、6ヶ月の滞納を経て期限の利益喪失後のサービサーとの販売価格の話し合いが不可欠です。

ところが、本人はそこまで耐えられるかどうかの精神状態でしたので、とにかく期限の利益喪失を早める必要がありました。早速銀行担当者と連絡を取り、通常6ヶ月かかるところを3ヶ月でサービサーに移管させることができました。

そこまでは良かったのですが、そこから先の販売に苦戦しました。オーナーチェンジで検討いただくためには利回り計算で魅力的なパーセンテージがなければ引き合いはありません。しかし、移管後直ぐには価格の調整がつかず、5ヶ月の時間を費やすことになりました。

その間、本人は移管されたことで今までのような取立てはなくなり精神状態も良くなってきて、継続していた仕事も徐々に持ち直し副業のアルバイトもできるようになりました。

ところが、最終的に債権者の応諾価格が希望するところまで下がらず、利回りの良い物件と言うわけには行きませんでした。そこで、視点を変えみてみると、賃借人はお勤め先がしっかりしており、過去一度も遅延がなく何一つ問題なく支払いが見込める客として抜群の安定感がありました。そのことを購入希望者に話し、保有してからの不安要素を払拭することで購入の後押しができたのです。

本人は当初、本住宅ローンの遅延もさることながら、他の無担保債権の催告に日々怯えて生活しており、取引先や賃借人にも迷惑をかけてしまうと言う自責の念も持っていました。その表情は悲壮感に苛まれ、場合によってはと言うことも想像してしまうほど追い詰められた状況で、自身も「もうダメだ」と口にするほどだったことを今でも忘れません。

結果、賃借人は継続して住み続けることができ、新オーナーも安定した収益物件を取得し、何よりも本人が大きな債務から解放されたことで再び頑張る意欲を持っていただくことができたと言う事実が任意売却の成功だと思います。