静岡にお住いのN様よりお問い合わせをいただいた当初、弊社ではTVでのCMを放映しておりました。何かのきっかけでそれを目にしたN様からTVCMを見て連絡しましたと連絡があり、相談をお受けすることとなりました。
N様は、数年前に体調を崩してから仕事に影響が出始め、見る見る収入が減り月々の支払いを補填すべくカードローン等に頼るようになったそうです。そこからは次第にローン会社も増えていき、気が付けば数社からの借入で支払いが回らなくなってしまっていました。
住宅ローンに関しても既にリスケジュールをしているとのことで、滞納は致命的となります。ご家族4人で住んでおりましたが奥様と子供二人は家を出てしまい、今では愛犬1匹との生活となってしまいました。引越しが希望で、条件は犬と暮らせる借家があれば良いとのことでした。既に数社からの借入も立ち行かなくなっているため、弁護士相談の費用も捻出したいとのことでした。
N様からそのような話をお伺いするころには、本人は精神的にも落ち込み、心臓を患っていたため健康状態も日に日に悪くなっていく状況でした。
そこで、まず行ったのは弊社の提携司法書士を紹介し、債務整理の受任としてカードローン等の各債権者に通知を出してもらう手続きを行いました。そうすることで、各債権者からの督促は司法書士を経由してとなり直接の取り立てはなくなります。複数社からの督促がないことで気持ち的にも落ち着くことができたと思います。
司法書士の紹介と同時に、市場調査を行いました。本物件は富士山を望める環境ではありましたが、建物が別れた奥様が考えたプランの為個性的で大衆受けしない間取りとなっており、地元業者によると市場性は厳しいとの回答が殆どでした。それでも、N様も今まで頑張って住宅ローンを返済してきましたので比較的残債も少なくなっており、何とか全額返済できるよう販売に努めました。
しかし、市場は正直で相場よりも高い値段ということで反響は殆どありませんでした。債権が銀行にあるうちは残債額全額の返済でなければ抵当権の抹消には応じていただけず、高く買っていただくお客様が現れない限り取引はできません。そのため、滞納継続により銀行の期限の利益を喪失してから保証会社から代位弁済を受けるのを待つことになりました。その間も、担当には販売状況の経過報告を定期的に行い、先々の価格交渉に備えました。
ところが、銀行担当は地元の販売会社に販売を託したいと申し出てきて、弊社とN様の媒介契約を解除させようと働きかけていきました。
しかし、媒介依頼は売主様の意思であり、銀行側が変更できるものではありません。今までのN様との信頼関係のもと、N様から銀行担当へ弊社との媒介契約は何があっても継続すると意思表示をしていただきました。その攻防を続けながら販売経過報告を送り続け、代位弁済の際には担当引継ぎもスムースに行うことができ、継続して販売をしていくことができました。
しかし、その後も新型コロナウィルスの流行により外出自粛等の緊急事態宣言が発令されるなど、さらに市場性は悪くなりました。そんな最中、関東地区の大手不動産仲介業者から本物件の案内希望の連絡がありました。詳細を確認すると、奥様が地元出身で引退後の住まいに条件がぴったりだと言うことでした。実際に本物件を含めいくつか比較検討した結果、本物件を購入するに至りました。この良縁は今後ないであろうことをN様と債権者に話し、取引を進めさせていただくことになりました。N様と買主様は当然快く了承いただき、債権者も今までの販売の苦戦を報告していたこともあり、比較的スムースに取引の準備を進めることができました。早々に売買契約を取り交わし、1か月後に残金決済を行うことにしました。
引越し先に関しては、地元業者の協力を得て少し築年数は経っていましたが、犬を飼うのにちょうど良い貸家を見つけることができ、残金決済までには引越しを終えることができ余裕をもって引渡しをすることができました。
残金決済は、買主、債権者、司法書士そして弊社が関東所在の為川崎駅の都市銀行の一角で行いました。問題なく残金決済を会わらせることができ、N様は決済後に破産の手続きを進める予定ですが、司法書士に当初から各債権者対策を依頼していたこともあり、不動産取引を含め一連の流れで手続きを進めることができました。債権者は回収業務を一旦完結することができ、買主様も希望する物件を購入することができました。N様に至っては、希望通りの結末を迎えることができ感謝しかありませんと最後には喜んでいただきました。
弊社を含めると4者となりますが、4者4様の納得のいく売買ができたことが何よりも喜ばしいと感じる取引となりました。成功の一例として今後の業務に生かせるよう心にとめておきたいと思います。