川崎市にお住いのH様は、弊社HPをご覧いただきお問い合わせくださいました。お問い合わせいただいた時には既に債権者から競売の申し立てをされていました。謄本で確認すると税金関係の差押え、第一抵当権の差押え、無担保債権でカード会社からの差押え、保険年金課からの差押えと稀にみる多さでした。しかしながら本人は切羽詰まった感じはなく、家賃13万円程度でオーナーチェンジをしたいと希望していました。お子様の学区と世間体が理由とのことでした。H様は、以前不動産業を経験したことがあるとのことで自宅周辺の相場もよく把握しおりましたが、いざご希望となるとオーナーチェンジに際して取引は高く、家賃は安くと非常に難しいご希望をご相談されていました。
まずは、各債権者に連絡を取り残債確認と差押の取下げ相談を行いました。第一抵当権者は売却の際に全額返済が可能であると見越し完済が条件となり、税金や保険年金課に分割納付を相談しましたが、相談は受け付けないと断られました。個人情報を含みますので詳細は話していただけませんでしたが、何かトラブルがあったようです。唯一無担保債権で差押をしていたカード会社が判子代で応じていただけましたが、取引価格としてはかなり高額になることは必至でした。
早々に一般客をターゲットに販売を開始し少しでも高く取引ができるよう地元業者をはじめ、以前取引をした会社等に情報を公開し客付けをお願いしました。同時に、エンドユーザーの買い手がつかなかった時のために買取業者にも声をかけ、買取価格の見積もりも依頼し準備を整えていきました。当初はH様が調べられた地元の相場に近い価格で販売を開始いたしましたが、問い合わせは一切なく、状況に応じて価格の改訂を行っていきました。しかし、物件は南道路で非常に明るい住戸で現地を見ていただければ気に入っていただけそうな物件でしたが、駅からのアプローチが悪く、思った以上に反響がありませんでした。地元仲介販社にヒアリングを行うと、やはり、道幅や坂の多さに難色を示すお客様が多いとのことでした。当然オーナーチェンジを検討していただけるお客様もなく、いよいよH様には現状を把握していただき、お引越しを前提に検討いただくようご説明いたしました。その過程で、奥様が融資を組んで返済を試みる案も出ましたが、親族間売買はさせていただけないため難しく断念せざるを得ませんでした。具体的な話がないまま決済可能期限が刻一刻と迫っていきました。
残された時間を考慮し、以前見積もりを取らせていた買取業者で、一番高額の提示をしていただいたところのご担当と連絡を取り、取引を成立させるために何とか買い上げていただけないかと、無理を承知でお願いしてみました。数日後会社稟議が下りた上限の価格提示があり、その価格をもとに各債権者に配分案を提示し応諾をいただき、H様にも取引を進めるか否かを考慮いただきました。その中で、各所調整を行いご納得いただける引越費用を捻出し、H様には取引を進めていただけるようすべての段取りを行いました。
すべての段取りを終え、売買契約から残金決済まで6日間、競売の開札日の2日前というタイトなスケジュールで競売回避を成功させることができました。
引っ越しに関しては、買主のご好意で1週間程度引渡し猶予をいただき、駅前のマンションに引っ越すことができました。奥様もこのタイミングで転勤となり電車通学に切り替わったため、結果として引越してよかったと喜んでいただきました。
ご相談いただくお客様には、皆さんそれぞれの事情がありご希望があります。できる限りご希望に添えるよう頑張りたいと思いますが、時には叶えられないこともあります。しかしながら、諦めなければ、良い結果に転ずることもあるようです。どんなことがあっても希望を捨てずお手伝いすることが大切なのだと、改めて感じた取引でした。