東京都台東区S様『全額返済しても競売が取り下げられない?!』
今回はマンションの管理組合から競売申立されたS様の事例をご紹介いたします。S様の物件は築52年の借地権のマンションの一室で、そのマンションの1、2階は店舗部分で3階より上の階層は住居部分という店舗と住居が一体になっているマンション。S様の物件は2階の角にある店舗でS様はそこで茶碗や陶器の販売をしておりました。しかし、商売はうまくいっておらず諸々の支払いに困っている状態で、それが原因で管理費の滞納をしてしまったとのこと。何度か遅れながらも支払いをしていましたが、とうとう痺れを切らした管理組合から競売の申立をされてしまいます。S様は思ったより人通りも少ないし商売もうまくいっていなかったことから、これを機に売却して店舗の移転を考えていました。そういった状況の中で「いい任売.JP」のHPを見ていい売却方法がないかと相談を受けたのが始まりでした。
S様と色々打ち合わせをしたところ、今回の競売申立の元となった債権額が比較的少額で、親族から金銭の協力を得られればすぐに返済ができることが分かりました。親族から金銭を借りて返済し競売を取下、競売という時間の制限を取り除き、通常売買をしてできるだけ高い金額での販売を目指すことになりました。返済にあたり管理組合の代理人である弁護士にその旨を伝え、競売の取下してもらえるかの確約をとるべく連絡をとりました。実は競売の取下というのは任意であり返済なされたからといって必ず取下をしなければならないという強制力はありません。ただ、返済をうけた場合、競売する意味はなくなり、さらに取下しないことで訴えられた場合に当然負けてしまうので暗黙の了解で取下されているだけなのです。私は過去に返済したにも関わらず競売の取下を拒否された経験があったので、念のため弁護士の確約の回答を待っていると問題が発生します。S様がネットで調べて返済さえすれば競売は取り下がるという情報を信じて、まだ先方から競売取下の確約がとれていないにも関わらず返済としてお金を振込んでしまったのです。そして案の定、相手方の弁護士からは返済はしてもらったが、取下はできない。取下の条件は物件を売却してS様が退去することが前提。という回答になってしまったのです。管理組合としては管理費の滞納だけではなく店舗の使用の仕方が悪く共用部分を勝手に使用したり、違法に改造したりと他の住人や店舗に多大なる迷惑をかけていたそうでその結果、管理費滞納を解消したところでまたいつ滞納するか分からないから競売は取下したくない、出て行って欲しいというのが管理組合としての回答でした。
対抗措置として競売を取り下げるように訴えれば勝てるのですが、その分弁護士費用や多少時間がかかってしまいます。それをS様に提案したところ、弁護士費用を支払う余裕はなく、手続きも面倒なので競売取下の訴えはしたくない。売却が決まれば競売取下に応じるというので売却を急ぐ方向で進めることになりました。競売までの猶予もなくなってきている頃でしたので、急いで買手を探すため色々なところに営業します。ですが店舗の利用のみで部屋が小さいことや土地が借地権で立地も悪いこともあり中々買手を見つけられません。しかし、ダメ元で同じマンション内でお店をやっている方々に声をかけたところ、1階でお茶屋さんを営んでいる方に興味を持って頂きついには購入して頂けることになりました。1階のお店は賃貸で借りている物件で、自分のお店が欲しいという購入をきめて頂きました。 競売まで残り1カ月を切っていましたので急いで契約と決済の準備をして無事取引を終えることができました。
今回のように銀行等ではなく管理組合や個人の債権者が競売の申立人だった場合、返済云々ではなく感情的な部分が大きくなり、競売の取下でもめることが多いです。今回はS様の勝手な行動によりこのような事態になってしまいましたが、無事解決することができました。この経験を活かして今後の糧にしたいと思える事例でした。