元々、大阪を拠点して音楽活動をしていたO様。主な仕事はCMソングなどを手がける作曲家でした。
仕事も順調で拠点を大阪から東京に移し仕事の幅も広げていきました。
当初は職場兼自宅を賃貸で賄っていましたがそれも手狭になり現在のマンションに移り住むようになったのです。
より仕事に専念できるようにリビングを防音設備のスタジオに変更し高額な機材も導入しました。それから数年後誰も予想できない事態に陥ったのです。
2011年3月11日東日本大震災。
東北地方を中心に大規模な災害。関東でも津波や地盤の液状化現象等様々な災害をもたらしました。
もちろんそれだけではありません。被災者への配慮なのか派手なものや豪華なものが敬遠される自粛ムードなど一瞬で世の中の雰囲気が変わりました。
O様は明るいイメージのCMソングを手掛けていいた為、震災後の世の中の雰囲気と逆行しており、これがきっかけで一気に仕事がなくなってしまいました。
しばらくは、今までの預貯金等でなんとかしのいでいましたが、仕事はなかなか復調せずとうとう生活保護にまで陥ってしまったのです。
しかし、O様は学校を卒業してから一度も会社勤めをした経験が無いまま、すぐに今の仕事で独立したこともあり、新たに仕事を見つけて働くという事が困難でした。
O様には音楽しかなく収入が無くても音楽活動を続けていく事しか考えられなかったのです。
当然、自宅を維持する事は諦め一時は他の不動産業者で売却を試みましたが中々、うまく行かず時間だけが過ぎていき、とうとう債権者から競売の申し立てをされてしまいました。
いよいよ焦ったO様はもっと任意売却に精通する業者はないかとインターネットで探しそこで見つけた弊社が運営する(いい任売.JP)にメールをくれたのです。
競売も進行しておりあまり時間も無い為、すぐに弊社の事務所に来店して頂きました。
状況を伺うと
「いま、請け負っている仕事の目途が付くまで住み続けたい。」
との事でした。
もし、三月末まで居住できたらどうですか?
と私は尋ねました。
すると、O様は
「3月末では今の仕事は目途が経たない。出来れば5月末までいるようにはできませんか?」
と尋ねられました。
私は正直こまりました。
O様の物件は開札がすでに3月10日にて決まっており今から約1か月しかありません。
これから販売でどんなに遅くても3月9日までに決済まで終わらなければなりません。そこからさらに2か月半無償で引渡しを猶予してくれる買主がいるのかどうかです。
通常、買主が代金を支払って物件の引渡しをここまで長い期間猶予してもらえることはありません。
しかし、O様のお気持ちは固くその条件で売却のお手伝いをさせて頂く事になりました。
時間もあまり無い為、すぐに作業にとりかかりました。
一般のお客さまでは上記の条件で検討して頂ける方はいませんでしたので弊社と特別懇意にしている業者に声をかけ駆け引き無しで目一杯の金額の提示をして頂きました。
それをすぐに債権者の元に届け価格面及び配分案の交渉に当たりました。
今回、O様の債権者は2件あり一番抵当は完済・2番抵当権者は一部弁済で売買価格についての決定権者は2番抵当権者でした。
翌日、2番抵当権者の回答を伺うと配分案と要求される金額にかなり開きがある事がわかりました。
買主様には目一杯の金額の提示をしてもらっていることもありもう価格を上げてもらうこともできませんでした。
そこで当社の仲介手数料を充てることも検討しましたがそれで何とかなる額でもありませんでした。
そこで完済である一番抵当権者に再度、相談を持ちかけ遅延損害金を免除のお願いにあがりました。
実は一番抵当権者の損害金は約600万まで膨らんでおりその部分を2番抵当権者に充当できれば2番抵当権者にとっても競売になるよりかなりの好条件になるのです。
一番抵当権者の担当者も当初はいい顔はされませんでしたがO様の今後の事も心配して頂き会社に掛け合ってくれ損害金免除を取り付けてくれたのです。
その結果報告を2番抵当権者の担当に伝えた所「すぐ掛け合ってくるから」と一度電話をきりました。
その一時間後、その担当者から電話があり「承認取ったから進めて」と応諾していただけたのです。
売買の金額等は何とか折り合いがついたのですが後は引渡しの期間だけです。
買主には当初から5月末でお話はしていましたが中々いい返事は頂けませんでした。
しかし、引渡しに時間がかかってもこの物件を取得するメリットを根気強く説明したところ、ようやく5月15日まで引渡しを猶予して頂く事に納得して頂きました。
3月1日に契約を終え3月8日に無事に決済を終えることができました。
現在、O様は5月15日の引渡し期日までに、どうしてもやり遂げたかったお仕事は順調に進んでいて予定通りに期限までに終えることができるとの事です。
並行して弊社では同じ区内へお引越しを希望されているので、仕事に差し支えないように転居先探索のお手伝いをしております。