横浜市鶴見区にお住まいのKご夫妻から任意売却の依頼を受けるきっかけとなったのは、弊社の訪問担当が直接お宅まで伺い状況を確認させていただいたことが始まりです。
ご夫婦と奥様の母親(80歳)と3人で暮らしていましたが、お母様はアルツハイマー(要介護5)で、徘徊を繰り返すなど目を離すことが出来ず、その介助費用で今までの預貯金を殆ど使い果たしてしまったとのことでした。そのため、奥様の仕事も限定されてしまい不規則な生活に加え、昼夜問わずお母様を気にかけていなければなりませんでした。ご主人も足を悪くされ、自由に移動が出来ず、お母様のサポートをしようにも思い通りにはいきませんでした。
ご主人と奥様の収入と合わせても母親の施設などの介護、介助費用を支払うと毎月預貯金から払わざるを得ず、当然住宅ローンの支払いも滞り、カードローンにも頼る結果となってしまいました。
状況を受け止め生活保護の助けを求めましたが、不動産を所有している為に生活保護の受給は難しく、まずは所有不動産の売却が優先になります。しかし、ここで更なる問題で、不動産の売却に話を進めるもお母様が持分を持っているため、成年後見人を立てなければ取引ができないという難題が立ちはだかりました。
そうしている間にも、債権者は競売の申立に移行しようとしており、任意売却でお客様を探すので何とか待ってくださいとお願いしつつ、まさに時間との勝負となりました。
とにかく、まずは当社専属の司法書士事務所に伺い、奥様(娘)が成年後見人として専任してもらえるのかどうかの相談をしました。もし、専門職でなければ認めてもらえないとなると、その専門職(弁護士)が専任されるまでの時間で競売になってしまう可能性がある為、奥様が成年後見人にならなければなりませんでした。精査してみると、実際の収支から見ても奥様(娘)が選任される可能性は高く、もし成年後見人として専任されれば、先々裁判所からの居住不動産処分の許可が必要になる為、司法書士との打合せ、販売活動、引越しの準備などをほぼ同時に進行させる必要がありました。特に売却先の探索ですが、とにかく債権者が競売の申立をする前に話をまとめなければならず、時間を見ては必要以上に連絡を取り進捗の報告をするなど担当者の顔色を伺いながらのお客さま探しとなりました。
ここでも、弊社の強みで関連会社に事情を説明し、最短で購入できるように現金での売買を承諾していただくことが出来ました。
この取引では、ご本人様たちの引越費用と裁判所の費用を捻出しなければならず、これも相談してお手元にお残しすることが出来ました。
ご本人様たちは、無事に引越しすることが出来、お母様も施設に入所して新たな生活をスタートさせました。
ところが、関連会社に購入していただいた不動産ですが、ご夫婦共に喫煙者で、相当のヘビースモーカーで、1日の滞在時間の長いリビングだけに留まらず、家全体に匂いが染み付いており、壁や天井はタバコのヤニで黄ばみ、全体的に暗い感じのする建物になっていました。気をつけて換気はするものの、長きに渡って染み付いたにおいは簡単になくなる事はなく、内見されたお客様の仲でもタバコを吸わない人にとっては数十分滞在することが難しいほどでした。
それでも、全面リフォームを前提に自分好みの家にすると購入に踏み切っていただきました。
ところが、更なる問題が浮上しました。
当該物件の前面の道路は、大蔵省(現財務省)が所有しており、前所有者が持分割合に応じて年間数千円の敷地利用料を払ってきました。しかし、新所有者への借地権譲渡ができない契約内容になっており、新たな所有者は持分を買い取らなければなりませんでした。その持分譲渡に関しては、財務省の委託業者が仲介に入っており、その業者の仲介でなければ取引が出来ません。いざ買い取るとなると、路線価按分での価格設定だといわれ、200万円以上を払わなければなりませんでした。とてもその金額負担は出来ず、前所有者名義で年間2,800円程度の使用料を払っていくことを提案していました。ところが、道路部分の謄本を閲覧したところ、年度が変わってから数人の方が持分を移転していました。おかしく思い財務省に確認したところ、委託していた業者との契約が満了した為直接の取引に応じている、価格は7万円程度だということでした。新所有者の方も持分が取得できるのであれば取得する方向で手続きを行いました。遡って前所有者から関連会社に移転し、それから新所有者にお渡しすることになりました。手続きに2ヶ月以上かかるといわれましたが、何とか最短で手続きしていただくよう財務省に掛け合い無事に残金決済を終えることが出来ました。
新所有者の方は、前所有者の方がどれだけ苦労してきたかは知らず、前所有者は、弊社が売却から販売までどれだけ時間と労力を費やしてきたかは知る由もありません。
しかし、取引後に見せていただいた皆様の笑顔で今までの大変さは救われたように思います。
我々の仕事は、表立って華やかな商売ではありません。簡単には理解していただけない業種ではありますが、お客様とともにどれだけ我慢して頑張れるかで、お客様に笑顔になっていただけるかが決まります。目立たずとも少しでも困っているお客様の支えになれればと今後も頑張っていきたいと思います。