今回は八王子市のT様の事例をご紹介いたします。T様と出会ったのは12月の初頭。T様は諸事情により仕事ができない状況で生活困窮者でした。生活保護を受けていましたが年金が受給できることを知り申請したところ、未支給分を一括で受給することができましたが、年金受給を生活保護の係に連絡する必要があることを知らなかったT様はその年金を自身の借金返済に全て使ってしまいます。さらには生活保護受給中に収入・所得があったために生活保護が打ち切られ、本来生活保護は必要なかったとし、支給された生活保護費の返還を求められてしまいます。収入はこれからの年金のみで生活費で消えてしまうため返還ができません。さらに自宅を差押されて競売が進んでいる最悪の状況です。T様は「明日一日生きるにも精一杯。家までなくなってしまったら、もう死ぬしかない。」と今にも泣きそうな様子で「なんとかしてください。」と依頼を受けることになりました。
自宅の競売はスケジュールがかなり進行しており時間がないためすぐに取り掛かります。並行して役所に出向き再度生活保護の申請を行い、また問題となっている返還金に関する交渉もしてT様の生活基盤を固めていきました。T様は今の自宅に住み続けることが希望でした。しかし、T様の物件には様々な問題があることが発覚します。物件は1LDKの戸建、土地は約13坪しかない所謂狭小住宅と言われるものです。さらに接している道路の関係で敷地を道路部分に提供する必要があるため再建築時に土地の面積が減り、それに伴って建替できる建物もさらに小さくなってしまうという物件でした。さらに建物は築46年と耐用年数が過ぎ、室内は掃除を全くしていないゴミ屋敷。建て替えるにも建物を再利用するにも問題のある物件で当然のように販売は難しいだろうと思っていましたが、事態は思いもよらず好転していきます。今回T様の希望は住み続けることですから対象のお客様は投資家なります。投資家は投資物件として収益性があれば物件の状況はあまり気にしない方が多いです。幸いにも今回返済金額を債権者と交渉した結果、差押物件が問題だらけのため、希望に近い金額で応諾してもらえることとなり、さらに生活保護の再受給で支払える家賃が増えたことで収益性が高まり思いのほか早く購入者を見つけることができました。生活基盤も固まり住み続ける条件での買手も見つかりこれで無事解決すると思ったのですが、ここからが本当の試練が始まりです。買手のお客様と契約のすり合わせしていく中で様々な条件を提示され、それを満たす為にはT様から買手のお客様へ直接売買することができない事態となりました。条件を満たすために一旦弊社の関連会社でT様の物件を購入し競売を取下、その他準備を整えてから引き渡すことでこの取引をまとめました。また住み続けるというのは賃貸契約となります。賃貸保証会社への加入が必須となり、生活保護の方でも保証会社の加入はできるのですが、T様は諸事情によりどの保証会社も加入することができないと断られてしまいました。競売の日程も迫っておりましたので各保証会社の営業担当に連絡をしてT様に問題がないことを詳しく説明し加入できるようお願いをして一度、断られた保証を特別に受けて頂けるようにしました。競売の期日も迫っており一つでも問題を解決できなければ、そこで競売が確定してしまうので文書には表せないほどのものでした。
すべての手続きが終わり最後にお会いするときに、実は弊社に依頼する前は別の業者に依頼していたそうで、全くT様の希望を聞いてくれず売却しか選択肢はないと決めつけ親身になって頂けなかったそうです。そんな中で弊社に出会い依頼する業者を変えて本当に良かったと涙ながらに言っていただけました。
これまで担当した案件の中でも苦労の絶えない案件でしたが、理想の結果に導くことができて本当によかったと思いました。