今回は広島市の50代女性の事例をご紹介いたします。
ご相談者は広島市に物件を所有しているT様。相談内容はT様自身すでに退去しており親族3人が生活している所有物件のローン返済に行き詰まり、できれば親族3人はそのまま住み続けられる形で任意売却したい。任意売却後の残債の支払いについては、他社借入も複数あり払いきれないので法的手続きをとって再出発したいとのこと。T様はまだローンの滞納はしていなかったのですが、既に生活が苦しい状況ということでご依頼を受けると同時に滞納が始まりました。
次に物件に居住している親族の方に今後のことを説明する必要があるので連絡させて頂くと想定外の事態が待っていました。親族はT様から事前に話がなかったようで、「任意売却」について憤慨しており話になりません。話を伺うと居住している親族の一人である父親が連帯保証人である事実が判明。仮に任意売却が成功したとしてもT様が法的手続きをとってしまうと父親へ請求がきてしまうことを特に気にしておりました。それについてはT様とお父様で話し合いをして頂きました。それからも何度も現状を説明し、理解して頂き今後の任意売却に協力していただけることになりました。また住み続ける方向でと話がありましたが親族は引越しをご希望されたので販売方針を変更して進めることになりました。T様曰く、これまで親族にはかなりの金銭的支援をしてきたそうで、消費者金融数社の借入や今回のローン返済できなくなった原因は親族にあり、その件でかなり揉めていたそうで、ほとほと親族には呆れており連絡を極力とりたくない状況であると後で話していただきました。
それから時間は経過し債権者との交渉が始まり任意売却が本格化していきます。今回のT様の融資はプロパー融資と言われるもので、保証会社がついていないために通常の債権者交渉より審査が厳しくが難航する案件でした。最初に交渉にあたった際は債権者から「あまり例のない事例で対応が難しい。これまで競売もしくは完済の二択で対応してきた。」と言われます。T様の物件は築も古くとても完済できるような物件ではないことは明らかです。それは債権者も理解して頂けていましたが、答えがはっきりとしません。債権者には査定書や市場調査の報告書などを添えていかに任意売却が有益かということを訴えることにより、価格は債権者の指示になりましたが任意売却を認めてもらうことができました。幸いにも指示された価格は相場に近い金額だったため販売は思いのほかとんとん拍子で進み、ほどなくして購入希望者が決まります。ご依頼当初、親族の方との話し合いや債権者交渉難航など問題はありましたが、無事に任意売却が成立させられると安心したのも束の間、今回の最大の山場を向かえることとなります。
それは親族の「引越先が決まらない。」という問題です。T様の物件を取引するために様々な手続きが必要だったため、引越の期間は約3か月あったのですが、3か月経過してもまだ引越の日程どころか引越先の物件が見つかっていませんでした。親族のかた曰く「引越しできる物件がない。」とのこと。確かに弊社の方でも物件を検索したところ物件の数が少ないことはわかっておりました。しかし、物件に対する拘りが強く選り好みされていたので、いつまでたっても引越先が見つかりません。引越以外の準備が整い退去期日が迫っているにも関わらず、それでも物件が決まりません
買主には引越先が決まらないことを理由に謝罪をして本来取引する日程を延期して頂き日々引越先を探索していきます。ようやく物件を決めて申込をかけたのですが次の問題が発生、審査に落ちてしまいます。内容的には審査に落ちるような内容ではないのですが審査の結果は「否決」。保証会社に連絡しどうにか審査を見直してもらうようお願いをするなど手を尽くしますが、好転はしません。他にも数件賃貸の審査に落ち、延期した日程も近づいてきます。買主に再度取引日の延期を申し出ましたが、これ以上の延期はできない。これ以上延期する場合は違約として賠償請求する最悪の事態に陥る寸前。取引日まで1週間を切りあきらめかけていた時、数日前に申込んでいたところから「審査承認」の連絡が入ります。契約や入居もすぐに出来るということでギリギリ引越先が決まりました。事前に引越業者や荷物処分業者の手配をしていましたので、取引日の前日になんとか引越も完了し物件の取引も終えることができました。
今回の案件は今まで担当した中で一番、引越明渡に苦労した案件でした。これまでも親族と所有者の関係性が悪く間を取り持つことに苦労することはあっても、引越先が取引日1週間前までに決まらないということはありませんでした。今後担当する案件にこの経験を活かしたいと思いました。