今回のご依頼主は７０歳代男性のＦ様。７年前に胃癌を患い胃の摘出手術をした後から日常生活に支障をきたすようになり、仕事を続けることができなくなっていました。年金以外の収入がなくなり住宅ローンの返済ができなくなっていましたが数年間はお子さんからの支援があり返済を続けていたのですが、その支援も続かなくなりとうとう住宅ローンの滞納が始まってしまいます。丁度その頃、Ｆ様から弊社へ任意売却のご相談があり既にＦ様ご家族は既に独り立ちなどでお引越しをされていて物件には誰も住んでいないので任意売却にて売却をしたいという事でご依頼を頂きました。

物件は駅から徒歩５分の場所にある築２２年の４ＬＤＫの戸建。中心街へのアクセスが良く商店や病院など周辺環境が充実している場所に位置しており売却に向いている物件という印象を受けましたが非常に重大な問題が発覚します。Ｆ様は数年前まで本物件に居住されており、その時に室内で犬を１１匹程飼育されていたそうです。掃除をしていなかったため室内は犬の糞尿の跡や臭いが凄く、リフォームした場合その費用も他の中古戸建より費用がかかってしまい、とても一般のお客様が購入しようと思えるような物件ではありませんでした。そうなると次にターゲットとなるのは室内状況が関係ない建替前提のお客様になりますが、その場合は解体費用が発生するためそれ相応の価格設定でなければ反響を得辛くなる等、販売に苦労するような物件でした。

任意売却をするためにまず債権者へ連絡をして販売価格の交渉を進めていきます。早い段階で適正価格での販売を認めてもらう事ができましたが、ここでも「税金滞納」という新たな問題が浮上します。固定資産税や水道料金を数十万円程滞納しており、本物件に差押がなされている状況でした。税金は納付しなければいけませんが税金の納付分を販売価格に上乗せしてしまうと相場価格より高くなってしまう為、より販売がし辛くなってしまいます。適正な販売ができずに競売になってしまっては本末転倒ですので今回の取引では一部の納付で差押を解除して頂けないかと役所の担当と何度も交渉しましたが、規定で全額の納付がなければ解除ができないと厳しい結果となってしまい、税金完納分の金額を上乗せした割高価格でお客様を見つけなければ売買はできなくなりました。

販売は場所が良く流動性があるのか反響は多く内見も定期的に入っていました。しかし、内見されたどのお客様も事前に室内の状況をお伝えしていたにも関わらず、室内が酷い状況なので購入検討できませんと良いお返事は頂けません。なかにはターゲットとしている建替用地で検討しているお客様も現れましたが住宅ローンの審査が通らず話が進みません。６ヶ月程販売期間が経過した頃、債権者からは購入者がいないのであれば競売にすると連絡があり後がなくなります。それでも諦めずに販売活動を続けた結果、ある仲介業者が建売用地を探している個人のお客様に紹介して頂けることになり、なんとそのお客様から購入申込みを頂けることになりました。時間が迫っているので早急に契約内容のすり合せを行い無事契約を締結する事ができました。取引価格は滞納税金を完納できる金額です。

決済が終わりＦ様と別れるまでに何度も深々と頭を下げて感謝して頂き、Ｆ様のためになって心からよかったと思えた取引となりました。