北海道旭川にお住いのH様は、弊社ホームページをご覧いただき問い合わせくださいました。
H様は看板屋を営んでいましたが、不況のあおりで収入が減り、本職以外でアルバイトをして何とか生計を立てておりました。しかし、そのアルバイト先で、両手に重度の怪我をしてしまい、腫れや痺れで細かい作業、または重たいものを持つなどの行為が出来なくなってしまいました。しばらくは今までの蓄えと労災とで生活はできていましたが蓄えも底をつき、本職の看板の仕事も好機に恵まれず、職安に通うも手に障害がある為、働き先が見つからず収入のない毎日を過ごさなければなりませんでした。自ずと各支払いが難しくなり、住宅ローンの返済が2か月ほど遅れた頃弊社に相談に来られました。
債権者は借入当時の住宅金融公庫で、現在は独立行政法人住宅金融支援機構が引き継いでおり、22年間返済してきましたが、先々の支払いも難しいと判断しました。一般的には5回~6回ほど支払いが滞ると債権回収会社(サービサー)に移管されます。移管されたのちに任意売却の申出を行い約半年ほどの販売活動がスタートいたします。査定書を提出した後売出価格の指示があり、引き合いがなければ価格の見直しを相談していきます。
ご本人が希望するのはオーナーチェンジで、長年住み慣れた愛着のある家で、娘が孫を連れて帰ってきたこともあり、広いこの家を手放すことにはとても抵抗がありました。
オーナーチェンジする上で、肝心なのが家賃設定ですが、H様自身定職がない為いくら払っていけるのかが分からず、まずはそこから模索しなければなりませんでした。奥様や娘様の収入を合わせて全体の収入から生活費等を差し引き実際に払える家賃を計算しましたが、近隣相場に比べるとかなり安い賃料にせざるを得ない状況でした。ということは債権者の応諾価格次第でオーナーチェンジができるかどうかが決まってしまうということです。
そのうえで販売を開始しましたが、市内の人気があるエリアからは離れるらしく、物件確認の問い合わせも非常に少なく、先の見通しが立たないまま時間だけが過ぎていきました。債権者との販売状況確認や価格の改定など話し合いを進めながら、オーナーチェンジを目的で検討していただけるお客様を探していきましたが一向に現れる気配がありませんでした。当方のネットワークを駆使して過去取引のあったオーナーや業者にも声をかけ検討していただきましたが、結局、雪の降る地域の場合諸々のメンテナンスにコストがかかる恐れがあるためと断られてしまいました。ちょうどこれから寒くなる時期に差し掛っていたため輪をかけて状況は厳しくなりました。
時間の経過とともに、債権者の競売への移行を視野に入れつつ、引越し費用を捻出できるように実需で買っていただける方を同時進行で探しました。万一オーナーが見つからなかったときのための布石ではありますが、支払い可能な賃料を考えると賃貸が借りられるかが一番の心配でした。そこで、生活保護の需給を提案し、家賃扶助の範囲で賃貸を探すことを薦めました。さらに、家族構成の見直しで、本人、奥様、娘、孫の4人家族ですので、借りようとする家も自ずと大きめのものになってしまいます。本人と奥様、娘とその息子の2世帯に分け、娘には母子家庭の申請で各種手当てや控除を受けていただくことで生活の安定を図っていただくようアドバイスいたしました。各々の賃貸であれば広い部屋を借りる必要もなく、隣り合わせのアパート等を探せば行き来できる環境も作れるのではと提案しました。ご本人たちも役所に掛け合い生活保護、母子申請の内容を確認して引越しの方向で話を進められるよう準備を整えていただきました。目線を変えたおかげで新しく借りる借家がほどなく見つかり、いよいよ引越しの準備に取り掛かりました。
このように下準備を行いながら、広域での情報公開としてポータルサイトを活用してお客様を募集し、ようやく1組のお客様を見つけることができました。購入希望者に状況を説明しご理解の上話を進められるよう打ち合わせを重ね、地元の協力会社にも現地を案内していただいたり、お客様に重要事項の説明をしていただいたりと協力してもらいながら取引を進めることができました。
しかし、任意売却の不動産売買契約の場合債権者の応諾がもらえなかった場合白紙解約になる条文が盛り込まれており、安心安全な取引を行うために一度業者に取得していただくことが最善と考えました。関連会社にその旨を話し、債権者や無担保債権など清算に関する業務を一度整理していただき、関連会社への所有権移転登記が完了してから、一般のお客様への移転登記を条件に取引を進めました。
ところが、いざ一般のお客様との残金決済が近付くころに本人が仕事で札幌まで出張しなければならず、荷造り等が終わりそうにないという連絡が入りました。購入いただいたお客様に迷惑はかけられませんので、残金決済の前々日の最終の飛行機で旭川に入り、翌朝8:00前から引越しを手伝うこととなりました。予測していた通り長年住み続けた家の為かなりの荷物が残っており、必要なものと廃棄するものを分けていただきながらまる1日かけて引越しを完了させることができました。
翌日は、無事に一般の方への引き渡しと残金決済を執り行うことができ、一連のドタバタ劇に幕を下ろすことができました。
今回、引越しをして新生活を送っていただくことになりましたが、生活保護や母子家庭の手当て、控除などの助成について目線を変えるだけで、より負担を軽減させられることができるようになりました。この仕事を通しての経験やお客様の声を聴くことで、少しずつスキルアップしお客様へのアドバイスへ繋げていけるのだとおぼろげながら感じられたお手伝いだったと思います。