今回のご相談者はさいたま市にマンションを所有しているI様ご夫婦からのご依頼でした。物件の名義はI様ご夫婦二人の共有名義で、購入された当時は3人家族で生活されていましたが、ご夫婦間の話し合いの末、別々の道を歩むことになり、奥様とお子さんは転居され本物件には旦那様お一人での生活となっていました。住宅ローンも連帯債務としてお二人の借入でしたが、別れた後は居住する旦那様がお一人で返済を数年続けていたそうです。しかし、旦那様の仕事が変わり収入が減り住宅ローンの滞納が始まり、ご相談を受けた時には滞納が数か月に及んでいました。それに加え既に競売の申立を受けている状況でもありました。初めにご相談を受けたのは奥様からで、旦那様が支払っているはずなのに、ある日競売の通知がきて大変ご不安な様子でした。旦那様とも面談をさせて頂きご希望を伺います。生活されていた旦那様はローンを払っていたが既に仕事と家の往復でこれを機に引越しをしたいと希望で、奥様も売却して精算をしたいと方向性が決まり正式に任意売却としてご依頼を頂くに至りました。
物件は最寄駅から徒歩15分の場所にあり利用路線はローカル線。築20年経過しており室内は数年前から掃除やゴミ捨てをしていないゴミ屋敷。とても一般のお客様にお見せできるような物件ではありませんでした。住宅ローンの残債務は物件の査定額を上回る金額で物件の状態からも査定額からも債権者交渉は必須。債権者には現状をよく理解して頂く為に室内写真や物件調査を踏まえて査定書を送り交渉にあたりました。しかし、今回の債権者は物件の査定・評価にかかわらず全額の返済以外は受け付けないという意向で、こちらがいくら任意売却によるメリットを説明しても、債権者は全額返済でければ損失が出たとしても競売で構わないと交渉が通じませんでした。諦めずに粘り強く交渉を重ねていきましたが、ついに債権者から「これ以上の交渉を受け付けない。」と早々に厳しい結果を突き付けられてしまうことになります。しかし、そこで止まっている時間も余裕もありません。生憎、債権者の意向が早く判明した為、短いながらも販売する時間は残されていました。そこで1円でも高く売るべく出来る限りの事をしようと動き出します。まずI様がご実家に転居予定との事でしたので先に転居をして頂き、物件を空にして頂きました。次にI様と共にゴミの処分と部屋の掃除を徹底的に行いました。壁紙等、どうしても綺麗にできない部分は残ってしまいましたが見違えるほど綺麗になり後は買主様を見つけるだけです。そこから営業活動としてチラシのポスティング、新聞折り込み、近隣仲介会社への営業を重ねお客様を募りました。しかし、販売価格が相場より高いからか中々反響がありません。物件を綺麗にしても内見が入らなければ意味がありません。諦めずに営業活動を続けようやく1組ご案内の希望が入り、そのお客様からなんと購入申込を頂く事ができたのです。すぐに契約を交わさせて頂き、滞りなく決済を迎える事ができました。
最終的に住宅ローンは完済になり尚且つお手元に余剰金を残す結果となりました。I様のご自宅を掃除するのは非常に大変でしたが、限られた中で最大の成果をもたらせた事は担当冥利に尽きる案件となりました。