今回のご依頼主は新座市にお住まいの60歳代T様。数年前に脳梗塞で倒れてから軽度の麻痺や言語障害などの後遺症が残り仕事を継続する事が困難になってしまったとご相談を受けました。T様は既に住宅ローンの滞納をされており、尚且つ数年前から滞納していた固定資産税の差押がついている状況でした。T様は子供が既に成人し妻と二人暮らし、今住んでいる家の広さは必要なく、建物も古いので売却して住宅ローンを完済、賃料の安い賃貸物件に引越しをしたいというご希望をお聞かせ下さいました。弊社は売却プランをご提案させて頂きご依頼を頂く運びとなりました。
実際に債権額や税金滞納額、物件調査を進めていくと様々な問題が浮上してきます。本物件は築27年経過している戸建のため耐用年数25年を既に経過しており建物価値はありません。それに加え調査の結果、申請している物件とは違う規模の建物を建てていた為、建築基準法上の規定を超えた物件、つまり違反建築の戸建という事が判明。違反建築の場合、住宅ローンの審査が厳しく融資を受けられる可能性は極端に低いです。そして本物件の違反内容(申請時2階建、実際は3階建)だとメガバンク含め信用金庫等の各金融機関からは『論外』と見なされ審査をするまでもないとの事でした。となると融資利用のお客様の見込みは消え去り、現金のお客様且つ違反建築でも構わないという方に限定されてしまいます。幸い住宅ローンの残債額は多くなかった為、現金で購入して頂ける方さえ見つければ完済を狙えると私自身は考えておりました。
しかし問題はまだあります。本物件の不動産につけられている税金の差押金額は遅れながらも払っていいた為、元本は十数万円程度でしたが延滞金が数百万円に膨れ上がっている事が分かります。納税課はここまで長期間・高額の滞納されている方は過去に前例がなく延滞金を含め全額納付しなければ差押解除はしないというかなり強気な態度でした。住宅ローンの残債と滞納税金を全て賄う金額で売却しなければならないとなると相場価格をはるかに超える価格で売却する必要があります。当然そんな価格で購入して頂けるお客様なぞ雲をつかむようなもの。この問題を全て解消しなければ前には進まないという事でT様の為、問題解消に尽力致しました。
販売活動と並行して税金差押に関して役所と交渉を進めます。担当に現状全てのご説明をしました。T様が脳梗塞でお仕事をすることが困難な事、今回自宅を売却をしてまで納税をしたいと考えているが、違反建築という事でかなり安い金額でなければ売却見込みがないと粘り強く資料や上申書と共に交渉を重ねた結果、T様の事情をご理解して頂き、残り十数万の元本を全額納付さえしてくれれば差押を解除すると回答を頂く事ができました。さらには既に膨れ上がっている数百万円の延滞金は免除して頂けると最高の交渉結果を導く事ができました。
販売については、問い合わせなどの反響は比較的多くあるものの、違反建築と事情を説明すると軒並みテンションが下がり、電話を切られてしまいます。そんな中でも内見をしたいと数組ご案内するも駐車場が狭かったり、想像以上に建物がコンパクトだったりとお客様の需要とマッチしません。滞納の月数も経過し日々損害金が増えて行きます。やはり違反建築物件の販売は難しいと心が折れそうな時もありましたが、そこは弊社の持ち味である「粘り強さ」を発揮し、とにかくお客様がいないか営業に尽力しました。たまたま同じ新座市にあるリフォーム業を主な業務とし最近不動産仲介を始めた業者に電話営業をした所、まさにエリアと価格共にピンポイントで探している現金のお客様がいるとご紹介頂きすぐ内見をして頂きました。お客様の第一声は「まさに条件に合った物件、購入します。」と即決。勿論違反建築物件と伝えた上で購入申込を取得。契約までに建物調査をさせて欲しいと要望は有りましたが、T様が希望する住宅ローンと税金の完済ができ尚且つ余剰金がでる金額での売買という事で問題なく契約を締結し売買決済を迎える事ができました。
決済が無事終わりT様は違反建築で売却すら危うく、多額の滞納税という状況から一発満塁ホームランのような結果に涙を見せながら喜んで頂き、今回のお引越しを機に娘さんご夫婦と同居されるという事でこれからは毎日お孫さんと会えると晴れやかな顔で帰って行きました。