江戸川区にお住いのK様は、ご主人が亡くなった際、子供たちや親戚が相続を放棄したため会社を含めご主人の財産をすべて相続しました。当初その会社の運転資金のため日本政策金融公庫から借り入れを起こし何とか会社の存続を図りましたが、寄る年波には逆らえず運営もおぼつかなくなり、返済が滞るようになっていきました。時とともに未払いは嵩み、日本政策金融公庫は何度となく返済を催促しましたが目途が立たないと判断し、K様の不動産を差し押さえることとなりました。
その情報が、裁判所の配当要求終期等の公告に掲載されたため、弊社の営業が閲覧し状況を伺うこととなりました。
K様は、ご主人に先立たれたのち残してもらった家に一人で住んでいました。長男長女は家を出て各々家族を持っています。次男は定職につかず時々荷物を取りに帰ってくる程度で、家には寄り付かないとのことでした。お子様方のところに身を寄せられないのかを尋ねましたが、ご主人が生前家庭を顧みない方であったため子供達には苦労を掛けたという理由から、子供達には迷惑はかけたくないと頑なにこの家に住み続けたいことを主張していました。年金生活でありながら身内からは距離を置かれ、今後おひとりで生活していくことがどれほど心細いか容易に予測することができました。
まずは市場調査を行い物件の査定をしました。地域的に高く取引されている地域ではありましたが、本物件は建築基準法に定める接道義務を果たしておらず、現状では再建築ができないことが分かりました。
一般的に再建築できない住宅には住宅ローンが使えず、購入を希望するお客様はほぼ現金で検討することとなります。その為販売をかけても購入客を見つけることはとても難しくなり、それ専門の業者に焦点が絞られます。しかし、リスクを承知で購入検討するため相当に安価での取引となってしまい、債権抹消に困難が生じることがあります。
このままでは、実需で購入いただくお客様はおろか、オーナーになっていただくお客様を探すことはとても難しいことです。何度も役所に足を運び調査を重ね、再建築ができるかを調べました。その結果、現況では難しいが近隣の合意のもと通路にお接している各々所有者が、道路の一部として敷地の一部を提供し、幅員4mの道路と同等の通路にすることができれば建築確認を受けていただけるということになりました。
漸く再建築が可能であることが分かり販売を継続しましたが、それでもタイミングよく購入希望客が現れることはなく、時間は止まることなく過ぎ競売期日が日々迫ってきました。
予てより、購入検討を相談していた弊社関連会社に再度状況を説明し、期日までに決済を行い競売回避していただくことを了承していただきました。
K様は、不動産の所有権を移したため所有する財産はほぼなくなったことになり、生活保護を申請し住宅扶助を受けることが可能となり、家賃を支払いっていくことができるようになりました。
同時に、購入していただいた関連会社もK様に賃借を継続していただきつつオーナーチェンジ物件として販売を開始し、先日販売が完了し購入希望者と取引終了することができました。個性的な物件でも、興味を示し購入を検討していただける方がどこかにいらっしゃると、再度確認できた取引でした。