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福島県S様「空き家を相続、膨らむ固定資産税の滞納、空き家問題を解決」

横浜市にお住いのS様は、弊社ホームページをご覧いただきお問い合わせいただきました。S様は10年以上前に福島県の土地建物を相続しましたが、本人はもとよりそこに住んでいる者はだれもおらず空家の状態になっていました。隣接市にS様の妹様が住んでおり、1年に数回換気をしていただいていたようですが、実際に生活していないため建物の老朽は否めませんでした。

そもそもS様は、相続時には神奈川県に移り住んでおり本物件に戻る予定はございませんでしたので、売却して処分しようと近県の親戚がたに相談したところ、先々代からの土地である為残しておくべきと口を揃えて反対されたそうです。

親御様の生前から滞納していた税金に関し差押が登記されており、催告がS様に来ていましたが払える資力がなく困っていました。親戚のどなたかに代表して買ってもらおうとも考えましたが、後になって贔屓をしたとトラブルになることは容易に想像できたため怖くてそれもできなかったとのことです。

しかし、10数年経ち親類縁者も代替わりをしていく中で、口うるさかった親戚の数も減り、そろそろ頃合いではないかと相談に踏み切ったという経緯です。

まずは当人から状況を確認し、市場相場を調べ、売却可能価格を調査しました。その際にS様から建物の状況をヒアリングしたところ、過去の台風や震災で屋根の瓦が飛び、穴が開いている状態のまま修復は一切していない状況とのことでした。話を聞くだけでは被害の大きさがわからなかったため、地元の協力業者に現地調査及び物件査定を依頼し、写真を撮って確認してもらいました。すると、屋根にバスケットボール大の穴が開いており1階まで雨水が浸透していて、大掛かりな修復工事を要する状態であることがわかりました。

そのことを踏まえ、一般エンドユーザーをはじめ、不動産買取業者など購入希望者をしらみつぶしに探索しましたが、本物件が高台の奥まったところに建てられていることもあり、簡単には購入検討者は現れませんでした。そのため現地調査をしていただいた協力業者に買取検討を強く勧め回答を求めてみました。買い取るためには条件があり、本物件の隣接地を含めた取引で、且つ用途変更をしなければならないので、非常に安価でなければ購入は難しいとの回答が返ってきました。調査の結果、本物件は市街化調整区域内に存しており、取得して再建築できるのは特定の方のみであり、再度販売するためには用途変更をしなければならないとのことでした。その用途変更には、かなりの日数がかかるというのが理由で安価での取引を求めてきました。

S様としては、購入いただけるのであれば早々に売却してしまいたいところではありましたが、滞納している税金を納付できなければ意味がありません。そのため、業者買取は断念せざるをませんでした。

それでもあきらめずに、ポータルサイトへ掲載するなど引き続き販売活動をつづけました。その甲斐あってか、何組か内見希望者の問い合わせがありました。まずは物件状況を説明し、外観だけでも下見していただき、それでも検討いただけれるのであれば立会いの下、内見していただくことにしました。その中で1組、強い内見希望があり、日時を調整して内見していただくことになりました。現地でお会いし自身の目で屋根の穴など状況を確認していただき、市街化調整区域内の農家住宅である旨も説明し、内容を理解していただいたうえで購入の意思表示をいただくことができました。

現況有姿であるため、購入希望価格にかなり悩まれましたが、債権の抹消が可能な価格で購入申し込みをいただくことができました。

善は急げということで契約決済の準備を進めていきました。打ち合わせを重ねる中で、室内の残置物は現況有姿のため買主が処分することになりましたが、お仏壇だけはS様が行いたいとの希望が出てきました。しかしながら、S様が福島県まで足を運ぶことはできず、妹様にお願いするも断られてしまいました。その為、弊社でお仏壇じまいの手配をし、ご位牌だけは妹様に引き取っていただき、費用は弊社の仲介手数料の一部から立て替えることで各々了承していただくことができました。

今回の取引はかなり少額の取引となったため、契約決済を同日に行い、契約のための重要事項説明を事前にリモートで行いました。事前の準備をしっかり行いましたので、契約決済当日は滞りなく登記の申請まで行うことができました。決済の終わりに、買主様に改めて市街化調整区域であることを念を押し、ご理解いただいたうえで活用していただくことをお願いしました。

今回の取引は、相続を受けてから10年以上空家になっており、少子高齢化の影響、若者の農林水産業離れなど社会を取りまく問題に直面し、所有不動産の売却困難という現実と、受益のない固定資産税等の出費に頭を抱える所有者の苦悩を目の当たりにした取引となりました。この現状に行政は手を差し伸べることはなく、法令順守を主張するのみで改善策を模索することもありませんでした。今後も都市計画区域内外で空家問題が出てくるであろうことを考えると、相談者様に少しでも有意義な情報を提供できるよう経験を積み研鑚していきたいと思います。