今回のお客様は江東区にお住まいのS様。自営で印刷関係のお仕事をされている方で、住宅ローンとしての借入はありませんでしたが事業資金の借入で自宅を担保に入れ銀行から融資を受けておりました。S様がお住まいのマンションは昭和57年築と築古のマンションでしたが、23区内で駅まで徒歩5分と好立地な物件でしたので担保評価としては十分でかなりの金額を借入しておりました。S様は昨今のコロナウイルスの影響で仕事がなくなってしまい収入はゼロ、事業資金として借り入れていた債務の返済に行き詰ってしまっていました。S様自身で金策を試みましたがうまくいかず、仕事もあるわけでもなく。解決方法を模索している最中、いい任売.JPのホームページからご相談頂きました。ご相談頂いた時点で既に滞納を重ねており競売の申立をされている状況でしたが、S様は30年住んでいる自宅をどうにか守りたいとオーナーチェンジ希望という事でご依頼を受けることになりました。
競売に移行しておりましたので時間に限りがある切迫した状況でしたので早速調査とオーナーチェンジに向けて活動していきます。今回の債権者(抵当権者)は全部で3社、その3社と交渉を行い売買(オーナーチェンジ)を認めて頂く必要があります。物件の売却相場と各債権者の債権額を照らしあわせると、立地の良いマンションで資産価値のあるマンションなので築年数にしてはかなり高い金額で売れると想定される物件ではありましたが、そもそもの借入金額が多く、1番手の債権者に返済する分ですべて消えてしまい、他2社の返済分までは賄えないことが分かります。今回のように後順位債権者まで返済が賄えないケースは珍しいことではなく、競売の場合、落札金額は抵当権の順番に配当され複数の債権者がいる場合は1番手の債権が完済になり余剰があれば次の2番手の債権者に配当されるシステムのため、2番手、3番手の後順位債権者が配当を受けられないケースはよくある事です。債権者も当然それを理解していますので任意売却でも競売でも明らかに配当がないと想定された場合、任意売却では配当を受けられない債権者に対し、応諾費用(いわゆる判子代)として数十万円を支払う事で売買を認めることが通例となっております。今回のケースも同様になると思いそれぞれの債権者と連絡をとり必要書類の提出や打ち合わせを進めていきます。売却金額やその配分等、交渉・調整を行っていき最終段階まで詰めているところで3番手の債権者から「検討の結果、提示された応諾費用では売買を認めることができない。費用を増額して頂ければ応諾の検討を再度行います。」と異例の回答が返ってきます。応諾費用にも相場が決まっています。相場はあくまで相場だとしても競売の場合、配当がない3番手の債権者への配分を相場以上に増やしたとして、当然そのお金は本来すべての売却益を受け取るはずの1番手の債権者の配分を減らすことになりますので、そんな理不尽な内容を発言権のある一番手の債権者が認める訳がありません。3番手の債権者もそれを理解しているはずです。3番手の債権者と何度も連絡をとり何故その回答になるのか聞きますが教えて頂けません。このままでは任意売却もできなくなってしまうので、しつこくこちらの主張を交えながら話をしたところ、3番手債権者の物件に対する評価が異常に高く計算されており尚且つ特殊な社内方針も相まって相場の応諾費用以上の請求をしてきたことが分かりました。3番手の債権者には様々な疎明資料を提出し再度交渉を行いどうにか3番手の自社評価を見直して頂き、本来の相場金額の応諾費用で納得して頂きました。
うって変わって販売(オーナーチェンジ)の方は資産価値が十分にありS様の月々支払いできる家賃も十分なものでしたので、すぐにオーナー様が見つかると思っていましたが、資産価値が高いのが逆効果になり、オーナーというよりご自身で住みたい方や、購入してリフォーム転売したい業者からの問い合わせが非常に多く、結果としてオーナーになって頂ける方を見つけられることができましたが、思いのほか苦労しました。
オーナー様も見つかり各債権者とも売却金額と各配分についてもまとめることができ契約決済と無事終えることができました。S様には債権者との交渉を逐一ご報告しておりましたのでご心配をおかけしてしまいましたが、決済が終わりオーナーチェンジとして賃貸借契約書を締結し終わった時に感謝の言葉を頂戴することができました。
理屈の通らない理由で債権者が纏まらないかと苦労しましたがS様の希望通りに解決できてよかったと思える案件でした。