T様からご連絡いただいたのは新年を迎えて間もない頃でした。T様フリーランスで仕事をしていましたが収入は安定せず、仕事がなくなってしまい住宅ローンの滞納も続いているという事でご相談を受けました。T様は物件購入当時、奥様とお子さんの4人家族で生活されていましたが、すでに離婚してお一人で物件にお住まいでした。一人で広い家は必要ないという事で売却を前提に依頼を頂くことになります。
ご依頼後、債権者に連絡すると債権者からT様はすでに別の任意売却業者に依頼済みで、これから業者の変更を希望された場合は通常6ヵ月間設ける任意売却期間をすでに期間の大半を消費しているため受け付けることができず、競売に移行してからの任意売却となると言われてしまいました。
今回の債権者は所有者様が任意売却を希望する場合、滞納後すぐに競売に移行するのではなく機会の損失を防ぐため約6ヵ月間の任意売却の期間を設けて頂けます。競売になってしまってはタイムリミットが設定されてしまい十分な販売期間が得られず競売費用もかかってしまいます。ですので任意売却の期間が得られないという事は非常に重要な事なのです。
T様に債権者の話をしたところ、確かに1~2ヵ月程前に他任意売却の業者へ依頼をしたそうですが、依頼後、しばらく音沙汰もなくようやく連絡があったと思ったら任意売却ができないので降りますと理由も言わず一方的に電話をしてきた経緯があったそうです。しかも、依頼は口頭だけで債権者への提出が必要となる既定の書面の用意や説明もなかったそうです。
事実確認として債権者に連絡すると実際は依頼を受けた業者から「仲介の依頼を受けた。」と電話があっただけで、必要書類の提出も何もなく、尚且つその任意売却業者は債権者に対し「税金の差押があるから任意売却は難しいそうです。」とマイナスな発言をしていたという、何から何までおかしな話でした。
債権者には事の経緯を整理して説明しT様からも連絡して頂き、すでに競売に着手していましたが、どうにか競売を止めて頂き新たに任意売却期間を設けて頂くことができました。
その後は債権者との交渉は順調に進んでいきましたので後は購入して頂ける買主様を見つけるだけです。しかし、この買主探索に苦労することなります。物件は築20年経過している3LDKのファミリータイプのマンション。駅からは徒歩18分と決して近いというわけでもなく一般的なマンションでした。それに加え室内はひどく荒れておりゴミ屋敷。尚且つ掃除はしていないのでホコリまみれでキッチンや洗面台などの水回りもひどい状況でした。とても一般のお客様が購入したいと思えるような状態ではありませんでした。
T様には事実をお伝えし少しでも売りやすくするために不用品の処分や掃除をお願いしましたがやはり限界があります。そんな中でも販売営業から4組ほど室内状況を事前説明した上で一般のお客様のご案内を取り付けましたが、実際に内見された際はすぐに検討外となってしまいました。
債権者交渉により販売価格を引き下げても問い合わせは増えますが内見は入らず、入っても玄関のところでかえってしまいます。もう一般のお客様では難しいと思い、一般の方への営業と同時に買取業者の探索にも力を注ぎました。買取業者はリフォームをして再販売するため、室内状況は関係ありませんがその分、売買価格が安くなってしまいますのでとにかく一円でも高く買って頂ける買取業者を探索致しました。
その結果、条件のあう買取業者を見つけることができ、T様にご報告すると是非、その買取業者に買い取って頂きたいとなり、債権者からも応諾頂き無事契約を締結することができました。
T様のお引越し先も探索もお手伝いさせていただき希望する賃貸にお引越しして頂く事ができ、契約に沿って無事、売買決済を迎えることができ任意売却の終結まで5か月ほど期間はかかりましたが、競売を回避することができました。
債権者に連絡した当初競売に移行すると言われたときは、任意売却が非常に難しくなるところでしたが、どうにか任意売却の期間を再度設けて頂き、その期間内で任意売却を成約させることができたことが非常に良い経験となりました。