台東区にお住いのM様は、設備関係の仕事をしていましたが業績悪化の為各支払いが困難になってきました。弊社営業が裁判所の配当要求終期等の広告を閲覧し、直接訪問して話を聞くことができました。裁判所から通知が来ていましたので競売になることはわかっているが、どうしてよいのかわからず悩んでいたところでした。
話を聞くと、オーナーチェンジで月180,000円の家賃を払ってでも住み続けたいと希望していました。固執する理由としては、お子様の学校の関係など奥様やお子様に迷惑をかけたくないというものでした。とは言うものの、180,000円の家賃が払えるのかという疑問と、オーナーになってくれる客がいるかという不安が頭をかすめました。
そこで、まず債権者に任意売却での販売に関し返済価格の相談をし、少しでも売却しやすくできるように低い価格での応諾を引き出しました。また、何よりも本物件が高額帯の為、購入を検討する方は皆慎重になります。オーナーとして買っていただく方のためにも少しでも利益が出るようにと試行錯誤しました。
本物件は、借地の上に自宅を建築しており、売買をするためには地代や名変料等の件で地主の承諾が必要となります。再度契約すると地主は借地権の残存期間なのか新規で30年なのかは別としてその間は、引き続き借地としての使用方法しか選択できなくなります。であればこれを機に売買取引をもって現金化できるのであれば新たな資産活用もあるのではないかと地主に提案しました。地主も代が変わっていたため、話の主旨を理解し売買に応じていただくことができました。
ここまでの話をまとめたうえで、関連会社に相談を持ち掛けオーナーになっていただくことをお願いしました。新たに賃借人となる現所有者に賃貸保証に加入することなどいくつかの課題はありましたが、それをクリアすることで取引に応じていただくことができました。競売の開札が差し迫る中、ギリギリのところで残金決済ができ競売回避することができました。
ところが、売買の残金決済と同時に建物の賃貸が開始となるわけですが、オーナー様によると賃貸してから7か月までは毎月家賃が振り込まれていましたが、8か月目から遅れるようになったそうです。その度ごとに保証会社から家賃の代位弁済を受けてきたとのことです。オーナー様としてはいつ家賃が止まってしまうのかと不安な毎月だったと聞きました。結局、決められた日に振り込まれたのは初めの7ヵ月だけであり、あとは何の連絡もなしに保証会社の代弁を受ける形であったとのことでした。弊社が売買の仲介をしたこともあり、オーナー様から依頼されM様に賃貸契約が2年で満了する旨を話に行くこととなりました。いざ本人と話してみると、契約期間の満了のことは頭になく、家賃もちゃんと払っていたという意識でした。オーナー様から聞いた今までの状況を説明し、再契約の意思がない旨の書面も送られてきているはずと話をしました。今となっては言い訳もできないと認めざるを得ず退去することになりましたが、引越し期間を3か月ほど欲しいということになり、オーナー様にはその旨を伝え引越しの猶予をいただき更に引越費用として150万円も出して頂くことができ、M様には余裕をもって引越しをしていただくことができました。
その後、空室になった物件を再度賃貸の募集をかけながら、売買の情報も提供したところ、中華料理店を営むある夫婦が購入したいと申し出てきました。借地権の多いエリアで所有権として購入できることにメリットを感じていただけたようで、気持ちよく取引をさせていただくことができました。
元所有者のM様との出会いから2年以上の月日が経ちましたが、M様にとっては当初の夢が叶いオーナーチェンジとして住み続けることができ、元地主の方とも快く借地の取引をさせていただき、最終的には必要とされる方に中古物件として気持ちよく購入していただくことができました。振り返ると、紆余曲折はあったものの皆それぞれがハッピーエンドであったのではないかと取引全般の結果を喜んでおります。