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大田区T様「不適格建物、違法増築、売買決済後の差押等トラブル続出」

大田区にお住いのT様は、弊社訪問担当が直接お宅に伺い話をお聞きしたことがきっかけでご依頼いただきました。配当要求終期等の公告を閲覧した担当がどのような内容で困っているのかを確認しにご自宅に足を運びました。

話を聞くと、T様はすでに年金生活ですが、家計はすべて奥様に任せておりました。しかし、数年前奥様に先立たれ、今まで定期的に支払えていたものが全く支払えなくなり、生活費が足りなくなっては借ることを繰り返して来たそうです。返済が滞った無担保債権の一社が、弁護士に委託し債務名義を取り、所有の不動産を差押え競売にかけたという経緯になります。

状況を把握したうえで、ご本人の希望をお伺いいたしました。70歳を超え年金生活であり、奥様が生前使われていたものはほぼそのまま残された状態で荷物も多く、引越しするには体力的にも厳しい。可能であれば住み慣れたこのマンションに住み続けたいとの希望でした。

まずは債権者の代理人(弁護士)とコンタクトを取り、不動産を売却して返済するに際していくら返せばよいのかを確認しました。決済時期が決まれば返済額が確定しますので、目安となる価格をもとにオーナーチェンジを目的として購入していただく方の探索に努めました。

債権者からも遅延利息が増えていくことを考えれば早ければ早いほど良いとの意見をいただき、早々に弊社関連会社にオーナーチェンジのはなしを持ち込み、競売回避のために協力していただきたいと相談いたしました。しかし、本人は年金生活でまだ借り入れも残っていたため、安定的な家賃の支払いを懸念し、買い取っていただくための説得材料に欠けていました。一番のネックは、日本政策公庫から年金担保で借り入れをしており、受給される年金が公庫経由で支払われていたのです。口座入金される金額では到底家賃は払えませんでした。そこで家賃支払いの為に、日本政策公庫にT様と同行し、偶数月に返済する額を従来の1/3に変更してもらうことで何とか家賃を確保することができました。

問題が払拭でき契約の運びと思いつつ物件調査を進めていると、さらに問題が浮かび上がってきました。昭和44年に建てられた当該建物は当初の建築基準で建てられており、法改正された現在では既存不適格になってしまうということです。そうなると建替えの際は半分程度の規模になってしまう為物件の価値としては半減してしまうことになり、保有するにはリスクがありました。そもそも、所有者は専有部分をバルコニー側に部屋を増設しており、管理組合から是正の指導を受けておりました。状況を説明すると、当初当該マンションは自主管理で規約も整っていなかった為、所有者がルーフバルコニー側の壁を壊し、部屋を増設し且つサンルームを造ってしまっていました。管理組合の指導でサンルームはすでに撤去されていましたが、増設された部屋に関してはまだ残った状態で、管理会社は原状回復を求めており、修復が完了するまでは管理費の増額を求めてきている状況でした。

しかし、原状回復に関しては全体の耐震強度から修復する壁の強度を計算する必要があり、過去耐震診断を行った経緯はなく、改めて診断を行うとなると、築年数からみて診断結果次第では当該マンション全体が大掛かりな耐震工事が必要となるのではと予測されました。

現実的には、増設面積に応じた管理費等の割増しが当面の解決策ではないかとの見解でした。

何とか歩み寄りの方向が見えたところではありましたが、いざオーナーチェンジとして住み続けていただくためには賃貸借契約を締結する必要があり、その際に賃貸保証会社に加入することが条件となっていました。保証会社からは、審査の結果連帯保証人をつけることが条件となりましたが、親戚、友人が極めて少なく遠い親戚にお願いするしかありませんでした。しかし、以前お金を貸して返してもらえていない為連帯保証人にはなりたがりませんでした。ここで躓くわけにはいかず通い詰めて説得にあたりようやく賃貸契約を締結することができました。

すべてが整い何とか残金決済を執り行うことができましたが、さらなる追い打ちで、後日登記完了の登記簿謄本を閲覧したところ、税金の差押えが登記されていました。何事かと司法書士に確認したところ、残金決済当日に差押え登記を入れられたため、前日、当日の閲覧では記載されていなかったとのことでした。買主に代位弁済していただき、家賃とともに分割して払っていただくことになりました。

このように様々なトラブルを乗り越え、賃貸として住み続けていただくことができました。生活のリズムが落ち着いてきたころ、春風とともに前向きな話が舞い込んできました。収益物件として譲ってほしいと業者の問い合わせがあったのです。実需としての問い合わせは数多くいただいておりましたが、賃借人と共に購入を検討いただく方はなかなか話を前に進められずにいました。今までの経緯や今後の対応等に関してすべて話したうえで、それでも強く保有を希望されましたので、オーナー様と快く取引をさせていただくことができました。

弊社としては、度重なるトラブルに見舞われましたが、その都度何とか乗り越え、お客様の希望に添えるようにと努力した結果、前所有者も新オーナーも皆気持ちよく売買契約、残金決済、物件引き渡しができたことで報われた気持ちになりました。思うところ、常にトラブルというものはついて回るものなのだなと痛感し、それを乗り越えようとする努力がとても大切なのだと教えていただいた気がします。