川崎市にお住いのY様は、平成17年に新築戸建て住宅を購入し、購入資金として金融機関から住宅ローン4,910万円の借り入れをしました。毎月18万円の返済で14年間コツコツと返済してきました。Y様は個人事業主で建設関係の仕事をしていましたが、不況のあおりで収入が安定しませんでした。
元は奥様と子供3人の5人家族でしたが、9年前に離婚をし、子供たちの養育費や食費、光熱費等の固定費、税金等を捻出すると住宅ローンまで支払いが回らなくなってきたとのことで秘書センターに相談してきました。
本人の希望としては、オーナーチェンジで住み続けたいというものでした。仕事の関係上、道具や資材が沢山あり、保管場所等を考えると引越しはしたくないとのことでした。
相談当初、債権者からリスケジュールの提案をされ毎月の返済額を見直す話をしていましたが、内容を確認すると住宅ローンを毎月18万円払っていたところ、17万円に変更するという内容でした。しかも、利息分の支払いの為元金は減りません。そこで、Y様に同行し債権者の担当に会いに行き、今回のリスケにメリットを見いだせないことを説き任意売却の方向で話を進めるよう提案しました。
しかし、債権者としては元奥様が連帯保証になっているため、任意売却で残ってしまった債権を継続して保証するという書面がなければ任売には応じられないとの回答でした。
元奥様とは離婚裁判中であったため、先方の弁護士と会って話をする約束を取り付け、状況の説明と元奥様の協力をお願いしに行きました。ところが、養育費等のことで意見の相違があり話を聞き入れていただける状況ではありませんでした。Y様にそのことを話し、元奥様の希望を聞いていただき和解していただくよう説得し、弁護士を通して話をするよう橋渡しをしましたが、思うように和解は進まず承諾は得られませんでした。
そうしている間にも滞納は進み、債権者も元奥様の承諾が得られない以上任意売却で話を進めることはできず、結果的に債権譲渡の方向で手続きを進めることとなりました。
債権譲渡された先と改めて販売方法等の確認をしたところ、特に連帯保証人の承諾は取る必要なく任意売却を進めることとなりましたが、債権者としては、死守したい手取り金額があり、かかる諸経費を合わせた金額でなければ取引に応じることができないということでした。それらを考慮して販売価格を定め販売していましたが、市場性が良いエリアと言う訳でもなく問い合わせは極めて少ない状況でした。
予てより、業者買取の目的で各買取業者にも同時進行で情報公開してきており、その中で一番高く買っていただける業者と万が一の時のために価格の調整をしてきました。販売状況として一般の方の内見が数件入りましたが、なかなか具体的に購入申し込みをいただくことができませんでした。
その状況が続くなか、債権者も相当の販売期間の後、競売の申立てを行うことになり、任意売却と同時進行を余儀なくされました。そのため、業者買取で債権者を説得し取引に応じていただくよう道筋を付けました。買主業者と債権者、売主の条件を擦り合わせ、売買契約を取り交わすことができましたが、スムーズに事は進まず、さらなる問題が前進を妨げました。いざ、引越し先を探す段になり、Y様は仕事で使う車を3台所有しておりその駐車場確保が絶対条件の為、物件が限られるにもかかわらず、築年数が古かったり、居室部分が狭かったりと納得できる物件がなかなかありませんでした。なお且つ、申し込をした物件の賃貸保証の審査がことごとく否決されてしまい、残金決済までに引越しを完了させることができませんでした。買主に事情を話し1か月決済を先送りしていただくようお願いし、その間に是が非でも物件を見つけ引越しをすることとなりました。休みも返上して探した結果、ようやく納得できる物件で契約の話を進めることができ、変更していただいた残金決済の日までに引越しを完了させることができました。
残金決済当日も、買主側の不手際はあったものの、無事に決済ができY様の顔に明るさが戻りました。任意売却で返済しきれなかった残債がありますが、債権者との話し合いでどうするかを決めたようです。
Y様は個人事業者の為、弁護士に相談して法的手続きを取るかどうかはしばらく様子を見て判断するとのことでした。いずれまた困ったことが出てくれば相談してくださいと分かれ、何とか生活を立て直していただきたいと願うばかりです。