元々、家族で服飾関係のお仕事を営まれていたM様。競売をきっかけに当社にご依頼がありました。
詳しく話を伺うとその物件にはご主人が一人で住んでおり、たまに息子さんが立ち寄る程度でした。
自宅の名義人である奥さんとはもうすでに別居していてほとんど連絡はとっておらず現在住んでいる場所もあまり詳しいことは分からなかったのです。
名義人が奥様である為、奥様から正式なご依頼を頂かなければ物事は前に進まないのですぐに連絡を取って現在の状況等を説明するとその日の夜にあっていただき、詳しく説明すると奥様はびっくりされていました。
奥様は別居されているものの現在の住所が知られたくないため、住民票は動かしていませんでした。その為、郵便物等の書類も受領することが出来ず、自宅が競売になっていることもこのときに初めて知ったのです。
しかし、奥様はしばらくすると冷静な表情に変わり「わかりました」とすべてを一任していただける形となりました。
奥様としては一人で暮らしているご主人のことを気に掛けている様子でご主人が望む形であればどういう形でもすすめてかまわないとご了解いただきました。
早速作業に取り掛かるとY様の物件は所有権と借地の間に建物が跨いでおり隣地からカーポート及び雨戸が越境されている物件でした。
また、地主様からの名義変更料は160万とかなり高めの要求をされており、競売になる前にも地元の不動産業者にて任意売却を依頼していましたが結局はそれにあった買主が現れず競売になっていたのです。
債権者に連絡を入れ、価格を相談し前任の業者と同じ価格にて販売し、地主様の管理会社とも連絡をとり160万円と高額な名義変更料の交渉も始めました。
それと平行して特殊な物件でもあったため、販売にはあらゆる物件の使用方法を考えて提案しながら営業をしていきました。
居住用・売り地・収益用土地・シェアハウス等のこの物件の可能性を模索しながら営業をかけていきました。
しかし、中々前向きなお客様は現れず時間だけ過ぎていき競売の開札期日も決まって少し焦りが出てきたところでなんと大手ハウスメーカーで建物の建築を検討されているお客様が現れたのです。
この物件は間口が2m丁度しかなく少し変わった地形をしているため駐車場も作れない形だったのですがこのお客様は車も必要がなく土地面積的に問題ありません。
もうこのお客様を逃してはいけないとすぐに条件等もまとめ高かった名義変更料も交渉の末70万円まで下げることに成功しました。
契約も無事に済ませ引渡しに向けてこちらの物件に住まわれているご主人の引越し先も探し始めましがそこでひとつ問題がありました。
ご主人はもう82歳と高齢で賃貸の申込人としては単独では難しかったので誰か連帯保証人を立てなければならないのですが奥さんと息子さんの仲が悪くどちらに頼りながら進めていくかを考えていかなければならないのです。
私はご主人と話をし今までの家族がばらばらになってしまった経緯等とこれからご主人がどちらを頼っていきたいのか話をしました。
その結果、ご主人は奥様とまた一緒に暮らしたいと話されてそれを奥様に伝えました。
奥様はご主人と一緒に生活するとまた、息子さんとの接点を持つことになるのでは躊躇されていまいたが奥様も久しぶりにご主人と対面してみるとやはりご主人の事が心配になったようで一緒に生活することを決めてくれました。
それにはご主人の表情はとてもうれしそうでした。
その後、二人が新生活を始める新居も無事に決まり物件の引渡しも終える事が出来、しばらくして奥様と一度会う用事が出来面会したのですがまた、再度過去の経緯をお話されて奥様は家庭の事情などが複雑であまり相談できる人がおらずずっと悩まれていたのです。
奥様は
「このままで包み隠さず何でも話ができたのは○○さんだけだったのよ。おかげで気持ちがすっきりしました。本当に有難う御座いました。」
と言って頂きお別れしました。
私たちの任意売却という仕事はもちろん高く売る等の実質的な部分も大事ですがその根底にある気持ちに寄り添ってあげることがより大事な事だと感じさせられた取引でした。